高次脳機能障害へのアプローチ
高次脳機能障害について
高次脳機能障害とは、病気や怪我により脳が損傷を受けたために、「話す」「考える」「覚える」「判断する」「予測する」などの、人が社会生活を営む上で重要な「高次の脳機能」におきた障害のことです。
高次脳機能障害の特徴は、前述の「話す」「考える」「判断する」「予測する」といった活動の他に、「意欲低下」「怒りっぽい」「幼い行動」などがあり、損傷された脳の部分により、どのような症状が現れるかは様々です。
高次脳機能障害は、麻痺などの身体的障害ではないため、「見えない」「触れない」ので、一見しただけでは気づかないことが多く、「隠れた障害」といわれます。本人自身も障害に気づきにくいため、今までと同じように生活ができない、家族・周囲の人たちとうまく付き合えないといった状況が生じてしまいます。
これらの問題は、仕事や学業、日常生活への障害となることが多いため、積極的に関わることが重要です。
高次脳機能障害のリハビリテーションの流れ
当院では、病気や事故で入院した救急病院から、全身状態が安定した方を受け入れています。
発症・受傷後2ヶ月以内で、回復期リハビリテーション病棟に入院された方に対しては、集中的な
リハビリテーションを実施しております。
また、回復期リハビリテーション病棟の対象とならない方に対しても、全身状態や症状にあわせて、その他病棟での評価・リハビリテーション・支援を行っています。
評価
高次脳機能障害のリハビリテーションでは、まず症状を正確に把握することが重要です。
検査を行うことで、障害された能力だけでなく、保たれている能力を把握します。
その結果をもとに、「見えない障害」を本人・家族や周囲の方に理解して頂き、出来ないところを改善したり、得意なところを伸ばしたりと、リハビリテーションの方針を決めていきます。
評価では、高次脳機能障害の症状の有無や、全体像を把握するために詳細な検査を行います。
本人やご家族への問診に加え、現在国内で標準的に使用されている高次脳機能障害検査各種(神経心理学検査)を使用し、障害の種類別に問題点を把握します。
症状や能力によっては、標準的な検査の実施が難しいこともあります。その場合には、行動観察や、
複数の検査を組合わせて評価を行います。
当院で使用している主な神経心理学検査
ウエクスラー成人知能検査(WAIS-Ⅲ)
標準注意検査法(CAT)
ウエクスラー記憶検査(WMS-R)
リバーミード行動記憶検査(RBMT)
遂行機能障害症候群の行動評価(BADS)
標準意欲評価法(CAS)
標準失語症検査(SLTA)
CADL実用コミュニケーション能力検査
標準高次視知覚検査(VPTA)
BIT行動性無視検査日本版 など
リハビリテーション
高次脳機能障害のリハビリテーションは、症状や重症度により様々な手段を用いますが、大きく分けて3つの方法があります。
機能訓練・・・障害されている能力自体を訓練し、能力改善・向上を目指します
- 記憶訓練として数字や記号を覚える
- 注意訓練として、書き取りや計算など集中する など
代償手段獲得・・・保たれている能力を有効に活用できる方法を身につける
メモを取ったり、日記をつけることで記憶の低下を補う
アラームを使用して時間の管理を行う など
環境調整・・・生活しやすい環境や、周囲の方との関わり方を検討・調整する
必要なものを置く定位置を決めて目印をつける
何かを伝えるときに、どのように説明するか、対応方法を統一する など
これらの方法は、それぞれが独立しているものではなく、補い合うことで効果的なリハビリテーションになります。
発症からの時期や経過、障害の種類や重症度、本人の性格、社会的背景などで、どの方法をどのような配分で活用していくかは、個人によって異なります。