在宅医療における看護師の役割

かかわるカタチ

心穏やかにいることに寄り添う医療を。

 

                               看護部長

緩和ケア認定看護師 山地 由紀子

 

 看護師として現場で働いていると大切にしたいものがよりはっきりとしてくる。大切なのは、相手と向き合う気持ちと姿勢であるという考えは若いころから変わっていない。

今、私は在宅医療の現場にいるが、何がなんでも在宅医療がよいと考えているわけではない。まず日常接する中で、本当に家で過ごすことを希望しているのかをキャッチすることが重要だと思っている。単純に病院と在宅療養を比較するのであれば、見慣れた家具、家族に囲まれて生活するほうがいい。同じ医療ができるのであれば在宅療養に越したことはないと思っている。生活の中に自然に医療がとけ込めるようにすることが在宅医療チームの役割だと思う。

在宅医療に携わって四半世紀が過ぎ、出会えた患者さんやご家族から学んだことは私には何にも代えがたい宝物である。さまざまな生き方をしてきた方が、さまざまな人生最期を迎えている。患者さんと接しているとケアをするというよりも、人生の一場面に参加させていただいているという気持ちにもなる。そして人は生きてきたようにしか逝くことができないのかとも思う。ケアをする私にいたわりの言葉やお礼を伝えてくださる患者さんやご家族に、私はよい看護ができているのか、失礼がないように尊厳をもって接することができているのかと、自分に問い掛けながら、何かしらこの年になっても自信がなく未熟な自分を痛感する。私が緩和ケアを学び続けるということは、人の重みを学ぶのだと考えている。進化する医療の現実のなかで、迷うことなく緩和ケアに携わっているのは、あたりまえの生活がいかに大切なことであるかを教えてくださる患者さんの生き方そのものであり、医療技術に頼りすぎない看護本来の人に寄り添うケアがいかに大切であるかを教えてもらっているからである。医療は確実に進歩するが、どれほど発達しても確実に死は誰にでも訪れる。支え合うことができる緩和ケアを在宅療養で実践していきたい。

 

 

訪問診療における看護師の役割

 わかこうかいクリニックの訪問診療では、看護師が医師の訪問診療に同行しています。看護師は、患者さんの状態を把握し、血圧や酸素飽和濃度などバイタルサインの測定を行います。また在宅療養に必要な物品を準備すること、限られた時間内で診療の補助、採血や尿道カテーテルの交換なども行い、医師が診療を円滑に行えるようサポートしています。

そして何より大切な役割は安心して療養生活を送っていただけるよう患者さんやご家族を心理的にサポートすることです。心理的サポートとは、患者さんやご家族の不安や悩みを共有し、一緒に解決策を考え、時には看護師の視点でアドバイスをさせていただくこともあります。日々の健康管理や日常生活上での留意点もご説明いたします。

そして在宅療養を続けていけるように訪問看護師やケアマネジャー、ヘルパーなど、他事業所の方々と連携を図っています。また病院を退院されるときの退院調整会議に参加しています。たとえば、ご自宅で最期を迎えることを選択された場合でも患者さんやご家族の気持ちに寄り添い、見守り、ときにはいっしょに悩みながら支援しています。

 このように、訪問診療に同行する看護師の役割は多岐に渡りますが、医師や他職種、関係機関と連携を図りながら、チーム医療を展開しています。